「YouTubeで見られると、DVDが売れなくなる」ってのは大間違い・詳細編


この前のエントリ「ハルヒYouTube」が「『YouTubeで見られると、DVDが売れなくなる』ってのは大間違い」というタイトルで、あちこちからリンクされまくっております。*1


せっかくですので、もうちっと細かく書きます。


まず、念押ししておきますけど、YouTubeに既存のアニメをバシバシアップする行為は違法です。それを享受するのもルール違反。


んで、前回書いたことを要約すると、「これだけアニメの本数があったらYouTubeがないとフォローできないし、逆にフォローできるから『ハルヒ』のブームが生まれた(でも、今後の状況のことを考えると、『ハルヒ』1本っきりのケースかもしれない)」ということです。


レンタルビデオ、レンタルDVDがあるじゃん」と思われる方もいるでしょう。
見たことないタイトルをいきなりDVDで買うことはできない、ってのは、まぁ当たり前だと思いますよね。ハリウッドプライス1980円でもちょっと躊躇するのに、アニメなんて「第1話+映像特典」で5000円ぐらいするわけですから。
でも、レンタルなら安い。1本300円とか400円で見ることができます。見逃しても、これでフォローすればいいわけですよね。アニメの送り手側、製作会社やメーカーもそれを望んでいるでしょう。


とーこーろーがー。レンタルでもセルでもいいんですけど、ソフトになるにはタイムラグがあるわけです。通常約3カ月。
たとえば、『ハルヒ』はウェブ上で話題になっていったわけですが、これはいかにも遅すぎるわけです。もしくはインターネットの情報消費速度がはやすぎる。3カ月前のブックマークの記事を、どれだけの人が覚えていて、それを振り返るのか、ってことです。
それに加え、これは前々回も書きましたが、3カ月後にはまた60本もの新作アニメがドバーッとリリースされます。「3カ月前に話題になっていたけど自分は見損なっている作品」をレンタルビデオでフォローしよう、とは思わないわけですね。忘却の彼方です。もちろん、ソフトリリース時に話題沸騰!となっていればいいんでしょうけど、なかなかそうもいかない。


さーらーにー。レンタルビデオショップは苦境を迎えています。


「減少が続くビデオレンタル店」(「りそな経済調査」より)
http://net.resona-gr.co.jp/resonabank/corporation/businessplaza/200109/plaza010904.html

こうした料金競争やここ2年ほどの貸出本数の減少を受けて、店舗数が激減しています。平成12年は6,257店と、5年年間で4千店以上減少しました。
 しかし、店舗数の減少が続いているこ とで、逆に、1店あたりの貸出本数は増加しており、レンタル料金の低下を吸収して、1店あたり売上高は増加しています。このところ、大手チェーン店が勢力を拡大しているのには、こうした背景があります。

これは5年前の記事です。
「6257店と、5年間で4千店以上減少しました」って書いてあるけど、単純計算で4割減!ですよ。ウルトラマンレオはおおとりゲン!


TSUTAYAとかの大型店は生き残ってますが、私鉄沿線沿いにあるような中小のレンタルビデオ屋が片端からなくなっているわけです。大型店は、品揃えはいいんですけど、必ずしも1本の作品を大量に入荷しているわけではありません。特に、スペースをあまりとらない映画なら、10本、20本と入荷できますけど、スペースをとるアニメシリーズを10本、20本と入荷することはできません。


つまり、タイムラグもあったうえで、借りにくい。新作アニメの話題作をレンタルビデオ、レンタルDVDでフォローしていくのは、はっきりいって難しいです。つまり、ここからヒットは生まれません。そう言い切っていいと思います。。『24』レンタルビデオショップで爆発しましたが、タイミング的には本放送があったときではなく、フジテレビで一挙放送を行ってから火がついたのです。


ようやく話はYouTubeに戻ってきます。YouTubeは違法ですが、いつでもどこでも毎日無料で再放送をやっているのと同じことなんですね。
無料で再放送といえば地上波の夕方だったわけで、『ルパン三世』も『宇宙戦艦ヤマト』も『機動戦士ガンダム』も再放送から火がついたわけですが、『涼宮ハルヒ』も(変則的ではありますが)再放送で火がついたアニメの一種と言えると思います。
年末に『エウレカセブン』が無料インターネットTVの「Gyao」で放送分全話を一斉無料放送しましたが、これは同じ狙いだと思います。ただ、やっぱりオンタイムのほうが強い。


繰り返しますがYouTubeでもなんでもいいから、とにかく見てもらわないと、ソフトの売り上げにはつながりません。話題性、作品のクオリティなどが前提条件としてあるので、なんでもかんでも見れればいい、というわけではないんですけどね。見てから「買うのやーめた」って人もいるだろうし。でも、クオリティが高いという評判が流れまくっていても、見ていないものは買えないんです。


だから、メーカー側は「しょうがねぇーなー」と言いながら「必要悪」として黙認していくのかな、と思っていたんですが、やっぱりそうはいかなかったですね。本放送を取り仕切る広告代理店からクレームがあったのかもしれないし、いまさらYouTubeになんて頼らなくても売れる作品(『ガンダム』とか)を持っている著作権者からのクレームがあったのかもしれない。これはわかりません。でも、新作アニメを売るには、YouTubeは武器になるし、過当競争、過酷な状況のなかでアニメを作りつづけている送り手からしてみれば、ひとりでも多くの人に作品を見てもらいたいはずなわけで、そのツールとしてもYouTubeは有効だったと思われます。


まぁ、やっぱり違法なんですけどね。ウヘ。


オトナアニメ Vol.1 (洋泉社MOOK)

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*1:はてなブックマークはなぜか1件だけ。ブックマークやってる人はDVD買わないのかな。