ガンダムの話


ここ数日、「ゲームセンターに明日はあるの?」が面白い。
http://d.hatena.ne.jp/Hayashida/
実は最近読みはじめたばかりなんですけどね。id:Hayashidaさん、スミマセン。


アタマから話を再構成していくのが面倒なので、ポイントポイントで雑感を書かせてもらいます。


腐女子ガンダム・リターンズ。」
http://d.hatena.ne.jp/Hayashida/20050514#p2

しかし、「ロボットアニメ」でありながら、主人公ロボがちっとも活躍せず、オモチャがまったく売れなかった本放送時のガンダムを、支持していたのは主に女性ファンでした。竹熊氏のエントリでも少し触れていますが、当時のオンナノコはガルマとシャアにそれはもう夢中だったのです。ガルマはザビ家の御曹司、シャアはそのザビ家によって国を追われた御曹司と、いうなれば新旧2人の王子サマが出てくるのですから。そして、そのガルマをシャアは殺してしまう。

どうでもいい話ですが、僕は名古屋出身で、『機動戦士ガンダム』が放映されていた頃は小学校低学年でした。
ガンダム』の映画公開直前に放送された、名古屋テレビ(当時・『ガンダム』は名古屋テレビ制作)のバックアップ特番*1のスタジオ収録に参加させてもらったのですが、番組の内容はまったく覚えてません。唯一覚えているのは、『ガンダム』の一部をスタジオで放映したとき、オープニングに映し出された「松竹映画」というクレジットを見ただけで、女性参加者から「キャーッ!」という黄色い歓声が上がったことです。司会者が「まだ松竹、としか出てないじゃないか」とツッコミを入れてました。ああ、『ガンダム』ってお姉さんファンが多いんだなぁ、と。


当時の『ガンダム』ブームについて書かれている、ライター・霜月たかなわ氏の文章を引用します。

ブームの反響はFCの乱立という形でも現れ、コミックマーケットにはFC会誌が殺到、さらにシャアを先頭に美形アニメキャラを扱った同人誌が出まくるわ(“やおい”の最初のブレイク)、アマチュアのパロディまんがが描きまくられるわ(“アニパロ”と呼ばれ定着)、シャアやララァの恰好をまねたファンが会場を闊歩するわ(“トミノコ族”と呼ばれたコスプレ)で、もう大変な騒ぎとなった。

女性主導、とまでは言いませんが、女性ファンたちのパワーが、明らかに低視聴率で打ち切られたアニメでしかなかった『ガンダム』を引っ張っていたことがよくわかります。


ちょっと時期がズレますが、こんなのを見るともう完全に「女性による女性のための」ものですよね。
「アニパロコミックス」(「OUTSITE」より)
http://homepage2.nifty.com/out-site/apccover.html


id:Hayashidaさんの文章に戻ります。

あげくメインスポンサーであったクローバーからは匙を投げられ、版権元であったサンライズは仕方なくバンダイへのセールスを取り付ます。そこでようやくプラモデルの販売が決定はしたものの*1、時既に遅し。


1:実際にはこれには諸説があり、プラモデルの発売が決定したのは放映終了後という説もあります。

バンダイの社史によると、『ガンダム』のプラモデルが発売されたのは80年7月*2。ちなみに『ガンダム』本放送が終了したのは80年1月。サンライズで『ガンダム』の企画立案に関わっていた飯塚正夫氏は、このあたりについて、やや記憶の混乱があるようで、某書でのインタビューでは『ガンダム』のプラモデルが発売されたのは81年8月、と発言してます(バンダイは劇場版のヒットを見てプラモデル発売を決断した、とも語っていますが、劇場版が公開されたのは81年3月です)。そのあたりが「諸説」の原因になっているのかもしれません。

しかし、これまで「オタクの歴史」が語られるとき、こうした女性ファンの貢献が語られることはほとんどありませんでした。僕が、オタクコミュニティを「男根主義だ」と指したのは、そういった「作品を評価している(できる)のは、俺達男性だ」という風潮がその場を支配していると感じていたからです。その結果、本来少数派でないはずの女性ファンの存在は霞んでしまい、オタクライターの竹熊氏ですら、女性ガンダム(アニメ)ファンの存在を「特殊なもの」として語ってしまいます。

オタクもいくつか世代に分けられると思うのですが、70年代から活動をスタートしているような、いわゆる第一次オタクであり、なおかつメディアに関わっているような人(ライターとか編集者とか)は、ほとんど男性なんだと思います。
これは推測でしかないんですが、70年代から80年代にかけての時期、まだ女性オタクがオタクとしてライフスタイルを確立するには、社会的な抑圧が強すぎたのではないでしょうか。僕が聞いた歓声の主たちも、ロックバンドやアイドルに夢中になるようにアニメのキャラクターに夢中になったあと、なにごともなく結婚して家庭に入ったような人が多かったんじゃないかと思います。まぁこれは男性にも言えることですけどね。


id:Hashidaさんの文章にリファレンスを送ったid:andy22さんの文章がこちら。
「いきなり、おとなり日記から」(「綾川亭日乗」より)
http://d.hatena.ne.jp/andy22/20050513#p1

例えば、初代ガンダムが視聴率不振で打ち切られたにもかかわらず、現在のようにシリーズとして隆盛を続けるようになったきっかけを、男根主義的男オタクである岡田氏は、「オタクたちがガンプラを買いつづけ、そのヒットにメーカーが着目した」によると、ことあるごとに解説してきた。がしかし、これは男オタクだけに限定した話である。女オタクたちは、不十分にしか描かれなかった物語を補完するためか、はたまたある程度面白く構築されたガンダムワールドがディスニーランドに行くより面白かったのか(当時まだTDLはなかったな)とにかく、自分たちでガンダム外伝を紡いでいた。主にシャア×ガルマに集約されるやおいものだが、しかし、女オタクたちのそうした表現活動もまたガンダムを第一線に呼び戻した要因だったと思っている。

前出の霜月氏の文章とほぼ同一のことをおっしゃっていると思います。


これに対するid:Hayashidaさんのコメントはこちら。
「リファ返しと自己批判。」
http://d.hatena.ne.jp/Hayashida/20050513#p3

宇宙戦艦ヤマトなんてもう、やおいファンに限らず女性にとってタマラナイ作品だったとか、岡田さんもそうですが唐沢さん(兄)もほとんど語らないですからね。

岡田、唐沢両氏について触れられていますが、そのあたりはなんちゅうか第一次オタクたちの意地とでもいうんでしょうかね。正確な状況分析よりも「オレがオレが」のほうが先走ってしまっていたのでしょうか。


ちょっと話がズレますが、id:Hayashidaさんの5月9日の日記より。
「日記まとめてリファ返し」
http://d.hatena.ne.jp/Hayashida/20050509#p2

トモコさん
http://d.hatena.ne.jp/tomoco/20050506#p1

そのいい例がオタク大賞だ。女子部門なんて見たことがないしね

そうですね。これに違和感を感じないというのはちょっとどうかな、と思います。


オタク大賞とは、この「日本オタク大賞」のこと。
http://www.super-otc.com/award/award2003.html
手元に書籍がないので不確かですが、2003年版にはコーナーとして「女子部門」があったはずです。内容は、女性オタクの人が次々と女オタク界のニュース、商品などを発表し、それに対して岡田、唐沢両氏が「理解できない!」などとツッコミを入れて客の笑いを誘うようなものだと記憶しています。まぁそういうことなんですね。


「『子供文化』と『オタクマーケット』。」
http://d.hatena.ne.jp/Hayashida/20050513#p2

また「ガンダムSEED」を例に挙げよう。オトコノコは「ロボットISBN:4063671518」を、オンナノコは「キャラクターISBN:4063671526」をそれぞれ「消費」する。互いに買う「商品」は違えど、支持する「作品」は同一のものだ(ISBN:4063671569)。

実はこの項目、文意がよくわからない部分がいくつかあったのですが、この引用させてもらった部分は「なるほど」と思いました。『機動戦士ガンダム』の場合も同じでしょう。ただ、いわゆる岡田云々らの年寄りオタクが語るように、「オレたちが」ということはまったくなく、「ロボット」(ニアイコール『ガンダム』のプラモデル)を消費していたのはティーンエイジャー男子と、さらにその下、小学生男子たちだったと思うのです。


再度、こちらから引用します。
「いきなり、おとなり日記から」(「綾川亭日乗」より)
http://d.hatena.ne.jp/andy22/20050513#p1

歴史的事実は正確に:「ガンダム」の映画化に女子ファンの活動が寄与し、ガンプラの売上が続編製作を決定したそうです。
でね、ガンプラと、やおい同人、この嗜好・志向の違いがね、男オタクと女オタクの違いを如実に表していると思うんですよ。

ここでは男オタクと女オタクについて語られていますが、『ガンダム』とそのブームに関していえば、「子供」という消費者層も外しては語れないと思います。


年寄りの男オタクが大きな声で「『ガンダム』はオレたちのおかげで! おかげで!」と叫んでいたのにムカついて、子供目線で『ガンダム』について振り返る『ガンダム・エイジ』という本を以前作ったのですが、あんまり売れませんでした。ガックリ。